コーヒーの世界では聞くことが多い「シングルオリジン」という言葉。これは、単一の農園でつくられた単一の品種のコーヒーという意味で使われます。コーヒーのサプライチェーンでは、従来さまざまな場所で作られたコーヒーが混ぜられて出荷されていましたが、どんなところで作られたどんなコーヒーかという、コーヒー豆のトレーサビリティ(追跡可能性)を担保して、一杯のコーヒーに詰まっている味の特徴や背景にある物語を楽しむことができます。
では、最近聞くことが増えてきた「日本茶のシングルオリジン」とは、どのようなものなのうでしょうか?この記事では日本茶のシングルオリジンの特徴について、数字を用いてわかりやすくご紹介します。
まず、日本茶のシングルオリジンもコーヒーの定義と同じで、多くの場合、単一農園単一品種と定義されます。つまり、一つの農園(茶園)でつくられている、一つの種類(品種)のお茶ということになります。
みなさん、日本にどれくらい茶農家さんがいるか、ご存じですか?令和4年に農林水産省から出されたレポートによると、令和2年時点で、日本には12,325戸の茶農家があります。同じく農林水産省のデータによると令和2年時点の日本全国の農家の個数は102.8万戸ですので、日本の農家の約1.2%が茶農家ということになります。このように考えると茶農家は少なく感じるかもしれません。 令和2年3月末時点の日本全国の郵便局の数は23,889個ですので、郵便局2個に対して茶園1戸の割合です。このように考えると少し身近に、茶農家の数も多く感じませんか?
ちなみに、全国のお茶の栽培面積は3.9万ヘクタールで、東京ドーム8,298個分です。ちなみにちなみに、3.9万ヘクタールは日本の国土面積3,780万ヘクタールの約0.1%です。
本題とは関係ない話ですが、数字は見せ方によって大きくも小さくも感じられますね。
すみません、少し話が逸れてしまいましたので、本題に戻ります。
つぎに、日本茶の品種の話をご紹介します。こちらの記事でも少し触れましたが、日本で栽培されているお茶の67.6%が、「やぶきた」という品種です。やぶきたの次に多く栽培されている品種「ゆたかみどり」が全体の6.2%ですので、1位の「やぶきた」は2位の「ゆたかみどり」の10倍以上生産されています。日本のお茶の栽培においては「やぶきた」一勝といっても過言ではありませんが、少量生産されている品種や、農林水産省に品種登録がされていない品種も合わせると、100種類以上の日本茶の品種があると言われています。
つまり、日本茶のシングルオリジンのお茶は、日本にある12,325戸のお茶農家さんでつくられている100種類以上の品種のお茶の中から、1つの農家で作られている、1つの品種のお茶だけを使って作られたお茶ということになります。
単純に組み合わせを考えると、120万個ほどある組み合わせの中の、1つのお茶とも言えます。少しロマンを感じますね。
お茶のシングルオリジンも、コーヒーと同様に、農家さんの生育方針や、お茶の品種の特徴など、それぞれが持つ特徴を強く感じることができます。1杯のお茶の背景にある作り手のこだわりや、お茶の味や香りの多様さを楽しんでみてはいかがでしょうか?
この記事では、日本茶におけるシングルオリジンに焦点を当てて、その魅力をお伝えしました。しかしながら、シングルオリジンの日本茶が良く、ブレンドされている日本茶が悪いとは言えません。むしろ、日本茶は「合組(ごうぐみ)」と呼ばれる茶葉のブレンドの技術と共に発展をしてきた嗜好飲料でもあります。
こちらの記事では、その日本茶の合組についてご紹介していますので、ぜひ読んでみてください。
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