アイスティーのクリームダウンを防ぐ方法は急冷?クリームダウン対策を3つご紹介

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暑い季節になると美味しいアイスティー。
最近は、お酒ではなくお茶と料理を一緒に楽しむ「ティーマリアージュ」も流行っていますね。

ティーマリアージュの場面ではお茶は冷〜常温で提供することが多いです。温かいお茶は内臓をあたためて料理のスパイスともいえる空腹感を減らしてしまうため、料理を楽しむ際には少し低い温度帯のお茶を合わせるとバランスの良い空腹感で料理を楽しむことができるという理由や、料理とドリンクの温度のコントラストをつけて料理とドリンクの特徴を引き立てるという理由など、様々な観点から、ティーマリアージュでは冷〜常温のお茶が使われています。

そんな、様々な場面で注目を浴びるアイスティーですが、すこし厄介なのが「クリームダウン」や「ミルクダウン」と呼ばれる、お茶が白濁する現象です。この現象は、高温で抽出したお茶を冷してアイスティーを作る際に多く発生します。

この記事ではクリームダウンの原因と対策についてご紹介したいと思います。
まずは、クリームダウンの主な原因について理解を深めたいと思います。

【クリームダウンの原因】

クリームダウンは、お茶が冷やされることでお茶の成分であるタンニンとカフェインが結合し、それが析出することが原因で発生します。

タンニンはお茶だけではなく赤ワイン等にも多く含まれで、渋みに繋がる成分です。
程よい渋みは飲み物の味のキレやインパクトに繋がり、嗜好飲料には欠かせない成分の1つです。

カフェインは、コーヒーをイメージしていただくと想像しやすいかと思いますが、苦味に繋がる成分です。
程よい苦味は味の深みや重さに繋がり、こちらも嗜好飲料にとって重要な要素の一つです。ノ
ンカフェインやデカフェのコーヒーやお茶を飲んだことがある方は、味に少し物足りなさを覚えた経験はありませんか?
あの感覚は、カフェインを抜いたことにより、味が軽くなったということに起因するのですね。

クリームダウンの原因は、タンニンとカフェインという、嗜好飲料、とりわけお茶にとっては重要な要素によって引き起こされているのです。

クリームダウンの原因を調べてみると、クリームダウンを根本的に解決しようとすると味が犠牲になる可能性がある、という結構悩ましい問題だということがわかりました。それでは、味を犠牲にしない方法で、クリームダウンを対策する方法はあるのでしょうか?

【クリームダウンの対策、、の前に、世の中で錯綜する情報】

クリームダウンの情報を集めてみると、クリームダウンの対策として「急冷するとクリームダウンが発生するのでゆっくり温度を下げたほうが良い」という情報や「ゆっくり冷ますとクリームダウンが発生するので急冷したほうが良い」という情報など、相反する様々な情報が錯綜しています。

美味しいお茶をみんなにも飲んでほしいと思って情報を発信していると思いますので、悪意を持って情報を流している人はいないと思います。ではなぜこのような相反する情報が溢れているのでしょうか?

様々な情報が錯綜する理由として考えられるのが、「濃度」という観点です。

クリームダウンの主な原因はタンニンとカフェインという説明をしましたが、重要なのはお茶に含まれるタンニンの「濃度」とカフェインの「濃度」なのです。濃度ですので、1ミリリットルのお茶の中に何ミリグラムのタンニンと何グラムのカフェインが入っているかということが、クリームダウンを左右する重要な要素なんですね。

アイスティーを作る場合、①そのまま飲んで美味しいお茶を抽出してゆっくりと冷やす、②そのまま飲むと濃いお茶を抽出して氷で希釈しながら急冷するの2つの方法が王道です。
②は濃いお茶を氷で希釈をしているため、①と②は厳密には異なる濃度のお茶ができあがっていると思われます。
味覚で感じる濃度はほぼ同じだとしても、成分分析をすると、タンニンとカフェインの濃度が異なることが予測できます。

重要な濃度が定量的に統一されていない①と②のお茶を比較しているため、情報の発信源により異なる見解になっているのではないかと考えられます。

カフェインやタンニンの濃度の計測は研究室レベルの作業になるので、実際にどちらの方法が良いのか、比較検討するためにはしっかりとした準備が必要になりそうです。

【クリームダウン対策は、実際どっちが良いのか?】

カフェインやタンニンの濃度の計測はハードルが高く、情報が錯綜しているのは理解できたが、答えが欲しい。
そうですよね。私達もそう思います。そこで私達は、以下の論文を参照しました。

参照: 小菅 充子, 「茶浸出液の冷却時に見られるクリームダウンについて」, 和洋女子大学, 1998年3月

こちらの論文では、急速冷却と暖慢冷却(ゆっくり冷却する)の2つの冷却方法で、その他の定量的な値は統一して、クリームダウンの濁度(クリームダウンの度合い)を比較しています。

論文では、濁度は急速冷却よりも暖慢冷却のほうがやや低いという結果が記載されています。

つまり、抽出したお茶はゆっくりと冷却したほうが、クリームダウンがやや改善されると言えると思います。

しかしながら、論文を見る限り、急速冷却と暖慢冷却の間には劇的な差はなく、暖慢冷却が絶対的な解決方法にはならなさそうです。

【じゃあどうしたら良いんだ!!】

そうなりますよね。はやく答えと解決策が欲しい。

残念ながら、いままで紹介した原因や論文の結果をみると、紅茶の味を変えずに直接的に問題を解決する方法はなさそうです。
しかしながら、クリームダウンの正体がわかってきたので、どうしたら理想に近づくことができるか、という方法がわかってきました。
それでは、理想に近づけるための3つの方法をご紹介します。
どの方法も万能薬ではありませんので、それぞれデメリットがあります。それらのデメリットも併せてご紹介します!

クリームダウン対策①

アプローチ: タンニンやカフェインが少ないお茶を選ぶ

方法: クリームダウンの原因はカフェインやタンニンの濃度に左右されますので、タンニンやカフェインが少ないお茶を選ぶことでクリームダウンを抑えることができます。実際に、上記の論文の中でもお茶の違いによるクリームダウンの濁度について実験されていて、キーマン紅茶やアールグレイ紅茶はウバ紅茶やアッサム紅茶と比較してクリームダウンの濁度が低いという結果が出ていました。お茶の種類を覚えるのは難しいと思うので、ざっくりと、「濃い味と濃い赤色の紅茶はクリームダウンが起こりやすいので注意!」、「優しい味と少しオレンジっぽい色の紅茶はクリームダウンが起こりにくい!」という感じで覚えておきましょう。

デメリット: 対策①のデメリットは、紅茶の種類に依存してしまうということですので、普段飲んでいる紅茶がクリームダウンを起こしやすい場合は、アイスティー用のお茶を購入する必要があります。

アイスティー用とホットティー用の紅茶を使い分ける、というのもなんだか少しプロっぽくて格好良いですね。
ホットとアイスの茶葉を分けている理由を聞かれたら、この記事で書かれていることを参考にして理詰めで返答してあげると、少しだけドヤれます。参照した論文なんかも口に出しちゃうと一気にインテリ感が出ます。

クリームダウン対策②

アプローチ: 砂糖を入れてタンニンとカフェインの結合を阻止する

方法: 紅茶に砂糖やグラニュー糖を入れます。そうすると、どういう訳か(気になるので後ほど深掘りして調べます)タンニンとカフェインの結合が阻害され、クリームダウンの発生を抑制することができます。

デメリット: 砂糖やグラニュー糖を入れるので、ストレートのお茶を飲みたいという人には残念ながら不向きの方法です。

クリームダウン対策③

アプローチ: 水出し抽出でタンニンとカフェインの抽出を抑える

方法: タンニンやカフェインは高温で抽出されやすい成分ですので、お湯で抽出して冷やすのではなく、冷たい水で抽出する水出しを採用することで、タンニンやカフェインの濃度を抑え、クリームダウンを抑制することができます。対策①はタンニンやカフェインが少ない茶葉を選ぶというアプローチでしたが、こちらはタンニンやカフェインの濃度をできるだけ抑えながら抽出するというアプローチです。ですので、いつも飲んでいる紅茶をそのまま冷茶で楽しみたい、紅茶に砂糖は入れたくない、という方には最適な方法かと思います。タンニンとカフェインが少ないので少し優しい味のアイスティーになりますが、とても上品な仕上がりになります。実際に、高単価のレストランでは水出し抽出のアイスティーをワイングラスで提供することも多くあります。水出し抽出の方法は意外と簡単。茶葉を容器に入れ、容器に水を注いで冷蔵庫で寝かせます。

デメリット: 水出しの最大のデメリットは抽出時間です。1~3mm程度の小さな茶葉の紅茶は最低約4時間程度、10mm以上の大きな茶葉の紅茶は最低約6時間程度、冷蔵庫の中で抽出する必要があります。

水出しは抽出が穏やかなので時間がかかりますが、長時間抽出しても抽出し過ぎにならないので、茶葉を取り出さずに10〜20時間程度冷蔵庫で水出しをしていても全く問題ありません。次の日に飲む紅茶を夜冷蔵庫に入れて寝ると、次の日はいつでも美味しいアイスティーを楽しめるという素晴らしさもあります。

手前味噌ですが、私達teploブランドからも、水出しを最高に美味しく楽しむためのカラフェを販売しています。
興味がありましたらこちらをチェックしてみてください。

【まとめ】

この記事では、クリームダウンの現象、錯綜する情報に関する考察、論文から紐解くクリームダウン対策についてまとめました。

お茶は情緒とサイエンスが交わる非常に魅力的な嗜好飲料です。
同じ事象に対しても様々な角度からの情報があり、とてもおもしろいですね。
今後も、teploらしいアプローチでお茶の謎を解析していきたいと思います。


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