こちらの記事で開発のきっかけを紹介したパーソナライズ抽出。抽出の温度や時間を制御することで実際どれくらいお茶の味は変化するのか、皆さん興味がありませんか?もちろん私たちも興味津々で、日々研究をおこなっています。
パーソナライズ抽出機能は、良くも悪くも世界初の機能ですので、少し間違えるとアイディアの面白さだけが目立ってしまいます。しかしながら、私たちは、アイディアや雰囲気を楽しむパーソナライズだけではなく、実験と研究に基づいたパーソナライズを提供することを信念としています。
この記事では、2021年にアサヒグループ様と一緒に取り組んだ研究を少しご紹介します。
少しマニアックな記事になってしまいました。teploで制御された抽出条件がお茶の味に及ぼす影響が気になる方は読んでみてください。
下の図は、teploティーポットを使用して、抽出温度と抽出時間を制御し、同じ緑茶を抽出した際の抽出液のカテキン濃度を調べた結果です。抽出温度が高ければ高いほど、抽出時間が長ければ長いほど、カテキン濃度が高くなることがわかります。
上で成分分析したお茶と同じ条件で淹れたお茶を人が飲んだ時にどのように感じるかを調べると、下の図の様な結果になります。カテキンは渋味成分でもありますので、カテキン濃度分析と同様の傾向で、抽出温度が高ければ高いほど、抽出時間が長ければ長いほど、人が渋く感じるお茶が抽出されます。
次に、旨味成分のアミノ酸と、渋味成分のカテキンの濃度の比率(アミノ酸/カテキン比)を調べると、以下のようになります。上で初回した通り、抽出時間が長ければ長いほどカテキン濃度が濃くなりますが、アミノ酸濃度も同様に濃くなりますので、アミノ酸/カテキン比にすると、抽出時間による変化量ははそれほど大きくありません。
それでは、人が飲んだ感想はどのように変化するでしょうか?人がお茶を飲み評点を付けた際の、旨味の強さの評点と渋味の強さの評点の比の結果は以下です。
ここで面白いのは、抽出時間を長くした際に、成分濃度としてはアミノ酸/カテキン比の変化量は小さいにも関わらず、人が飲むと、旨味評点/渋味評点比は大きく減少していきます。つまり、抽出時間が長いお茶は、成分濃度としては旨味成分のアミノ酸も濃く抽出されていますが、人が飲んだ時に渋く感じるという結果が見えてきます。
このようにして、私たちは抽出条件を変更することによる数値的な変化と人が感じる変化を可視化し、その結果をもとにしてパーソナライズ抽出のアルゴリズムをつくっています。
また、結果として、これらの実験や研究を、2021年には2回学会で発表する機会もいただきました。
数値だけを分析しても見えてこないことがありますし、人の感想だけを分析しても理解ができないことがあります。
私たちは、これからも数値と感想の両方を研究し、お茶の不思議を紐解き、最高に美味しいお茶を提供していきたいと考えています。
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著者情報/ teploについて
teploは「美味しいお茶を世界中に届ける」というミッションを掲げるお茶のブランドです。
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