「コーヒーよりお茶の方がカフェインが多いんだよ」と言うことを聞いたことはありませんか?私はそれを聞いたとき、驚き半分、疑い半分、という感じでした。
ということで、この記事では、「コーヒーよりお茶の方がカフェインが多い説」についてデータを用いて紐解いてみたいと思います。
今回は文部科学省の日本食品標準成分表2020年版(八訂)全体版を参照しました。成分表から抜粋した数値は以下です。
・100gのコーヒーの抽出液中のカフェイン量:0.06g (抽出方法: コーヒー粉末 10 g/熱湯150 mL) ・100gの玉露の抽出液中のカフェイン量:0.16g (抽出方法: 茶 10 g/60 °C 60 mL、2.5分) ・100gの煎茶の抽出液中のカフェイン量:0.02g (抽出方法: 茶 10 g/90 °C 430 mL、1分) ・100gのかまいり茶の抽出液中のカフェイン量:0.01g (抽出方法:茶 10 g/90 °C 430 mL、1分) ・100gの番茶の抽出液中のカフェイン量:0.01g (抽出方法:茶 15 g/90 °C 650 mL、0.5分) ・100gのほうじ茶の抽出液中のカフェイン量:0.02g (抽出方法:茶 15 g/90 °C 650 mL、0.5分) ・100gの烏龍茶の抽出液中のカフェイン量:0.02g (抽出方法: 茶 15 g/90 °C 650 mL、0.5分) ・100gの紅茶の抽出液中のカフェイン量:0.03g (抽出方法:茶 5 g/熱湯 360 mL、1.5分~4分)
すごく面白いデータです。まず、お茶をここまで細かく分類して、それぞれのお茶の美味しさの特徴が出る条件で抽出して、成分分析して、それを公開している文部科学省って、率直に言って凄すぎます。煎茶と紅茶を別にするのは容易に思いつきますが、煎茶と釜炒り茶を別に分類して試験をするなんて、お茶好きの人からしたら、ちょっとシビれませんか?「わかってるね〜!」って感じですよね。
話を元に戻して、結果の分析と考察をします。
この結果から言えることは、「玉露」以外のお茶は、コーヒーよりもカフェイン量は少ないという結果になります。
コーヒーよりもカフェイン量が多い玉露について、すこし深掘りしてみましょう。
抽出方法が、 茶 10 gに対して60 °Cのお湯を60 mL使用して2.5分抽出となっています。これも、「わかってるね〜!」と言いたくなるような、玉露の美味しい淹れ方です。ただし、この淹れ方は「しずく茶」と呼ばれる淹れ方で、玉露の旨味が凝縮された1滴を楽しむ、という淹れ方です。抽出中に茶葉がお湯を吸いますので、実際に飲むことができる抽出液は20ml〜30ml程度になるのではないかと思います。本当に「雫」のようなお茶ですが、それでも満足感を感じることができるくらい凝縮されています。ですので、データで使用されている玉露は、コーヒーで例えると、エスプレッソのような飲み方なのです。
雫で飲む玉露と、カップで飲むコーヒーを、「同量の100g中のカフェイン量」で比べているので、少し現実の飲み方には沿わない方法で比べてしまっています。
「エスプレッソ300mとコーヒー300mlに含まれるカフェイン量を比べました」と言われた時に「誰がエスプレッソ300mlも飲むねん」と突っ込みたくなる感じと同じ違和感です。
データとして誤っているとか、比較方法に異議を申し立てたいとか、ということではないのですが、玉露だけ特殊な淹れ方をしているので、結果に少し違和感が残ってしまうという感じです。
おそらく、この玉露のデータが一人歩きして、「コーヒーよりお茶の方がカフェインが多い」という説がうまれたのではないでしょうか。
「コーヒーよりお茶の方がカフェインが多い」説は、コーヒーと同量の玉露(雫茶の淹れ方)を比べたら、正しいということになります。ただし、現実的な生活の中での飲用量を考えると、やはりコーヒーの方がカフェイン量は多いとう認識が正しいのではないか思います。実際に、玉露以外のお茶はすべてコーヒーよりもカフェイン量が少ないですね。
ですので、
「コーヒーよりお茶の方がカフェインが多いんだよ」
と言う人に対する返答は、
「確かに玉露に関してはそうですね。ただし、玉露とコーヒーを同じ量で比べるのは、あまり普通の生活には即していませんね。玉露は非常に濃いので、コーヒーでいうとエスプレッソのようなもの。エスプレッソをコーヒーと同量飲むのは非現実的ですよね。玉露はコーヒーと比べておよそ1/4〜1/5の量しか飲めないことを加味した実質的なカフェイン摂取量を考えると、コーヒーのほうがカフェインが多くなりそうですね。ちなみに、コーヒー以外のお茶はコーヒーよりもカフェイン量が少ないですよ。」
ということになります。このまま言うとたぶん嫌われますので、マイルドにアレンジしてみてください。
データを見ることも大切ですが、データの背景を見ると、さまざまな事がわかってきますね。
今回深掘りをする中で、文部科学省さんのお茶への愛を感じて嬉しくなりました。お茶の知識がないと、煎茶と釜炒り茶を分けたり、玉露をしずく茶で淹れるなんてアイディアさえ浮かばないと思います。結果のデータも非常に明確で、非常に勉強になりました。
ということで、今回の記事はここまでです。
今後も、お茶に関する説を勝手に分析してきたいと思います。
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